東京高等裁判所 昭和31年(う)244号 判決
被告人 佐々木寿子
〔抄 録〕
論旨第一点について。
所論は、被告人は韓国人鄭換変の依頼により保管料一日金二百円の約にて本件麻薬を預り、同人のためこれが分譲を代行したものに過ぎないから、被告人自らは営利の目的で麻薬を譲り渡したものではない、旨弁疏するが、売却を委託されて受け取つた麻薬を他人に売却してこれを買主に引渡すことは、麻薬取締法第十二条第一項にいわゆる麻薬の「譲り渡し」行為に該当し、又かかる取引によつて行為者が何等かの利益を取得するに於ては、その名義の如何に拘らず、同法第六十六条にいわゆる「営利の目的で」同条所定の違反行為をした者と解すべきところ、原判決挙示の各関係証拠によれば、被告人の原判示第一乃至第四の麻薬譲り渡しの事実は、所論の営利の目的の点をも含めて優にこれを肯認することができるのであるから、論旨は理由がない。
(中西 山田 石井謹)